PC・タブレットは学びを深める手段!小学校のICT担当の先生必読の一冊「まんがで知るデジタルの学び」

全国学力・学習状況調査では、ICT機器の活用状況が示されました。調査対象である小学校6年生、中学校3年生の回答では、半数近くが週3回以上授業でPC・タブレットなどのICT機器を活用していることがわかり、一人一台導入された端末が徐々に学習に生かされつつあることが明らかになりました。コロナ禍で急遽進んだGIGAスクール構想、一人一台の端末が導入されて2年近く経ちますが、端末を使うための目的や、その使い方のルールについて、どのように決めているか気になっている先生もいらっしゃるかもしれません。そんなときに読んでおきたいのが「まんがで知るデジタルの学び」です。

書籍案内「まんがで知るデジタルの学び」

タイトル:まんがで知るデジタルの学び―ICT教育のベースにあるもの
著者:前田 康裕

熊本県で教師をされている前田康裕先生の、「まんがで知る」シリーズの最新作です。
本書では、子どもたちに一人一台端末を導入された小学校で、先生方がどのように活用していくかが描かれています。
なお、本書の内容については、出典を明記した上で、「インターネットでの画像の一部引用もかまいません」と書いてくださっています。
前田先生へ感謝しつつ、その学びを共有するために一部を引用しながらご紹介いたします。

タブレット・PCの一人一台端末導入の目的は「授業改善」のため!

子どもたち一人一人に配布されたタブレット・PC端末、導入されてから「使いたい」と思える先生も、「困ったな」と思う先生もいらっしゃるかもしれません。本書の中でもそうで、研究授業でタブレット・PCを使うことを義務化使用とする先生に対し、2012年のOECDの調査を引用して反論する場面があります。

 

ICT機器をOECD平均よりも使っていない学校のほうが
良い成績をあげていたんです
OECDの教育スキル局長アンドレアス・シュライヒャーは
「私たちが断片化した方法で学校にテクノロジーを導入し続ける限り
テクノロジーの可能性を実感できない」と言っています※
※アンドレアス・シュライヒャー著『教育のワールドクラス 21世紀の学校システムをつくる』307-308頁

引用元:まんがで知るデジタルの学び 21ページ

 

このセリフで、研究授業での端末使用の義務化は見送られますが、重要なのは「断片化した方法で」という部分でした。

 

子どもたちが学習の道具として日常的に使いこなせるようになれば
効果は上がるということです

引用元:まんがで知るデジタルの学び 25ページ

 

授業をよりよくしていくことを教員の共通の目的にすることで、日常的に端末の利用機会が増え、子どもたちへの教育効果も上がっていくということです。

タブレット・PCの使い方は先生が決める?生徒が決める?

タブレット・PCの導入により、新しいルールを決めることを迫られた先生方もいらっしゃるかもしれません。本書のストーリーでも、子どもたちがプログラミングやタイピングのゲームで休み時間までタブレットを使う子どもが増えてきて、休み時間中の活用方法についてのルールが議論されます。
しかし、タブレット・PCなどの端末使用ルールを教員が決めてしまって、「子どもたちが端末を日常的に使いこなす」というゴールにたどりつけるのでしょうか。

まんがで知るデジタルの学び91ページより

 

先生方によっては、学級会で子どもたち自身がルールを話し合って決めることもあるようです。このような話し合いを通して、子どもたちは身近な社会である学級へ参画し、合意形成していくことを学ぶことができるのです。
また、この学級会でもタブレット・PCなどの端末を活用することができます。本書のなかでは、「デジタルカード」を活用して、子どもたちの意見を可視化することで、話し合いがより活発になり、より納得感のある結論を導く方向に動いていました。

端末はチャットやゲームのためのもの?

端末利用のルール決めに関連して、子どもたちがタブレット・PCを何に活用しているのかの調査も抜粋されています。

 

OECDが2018年に行った調査では、日本の子どもたちが教室の教科の学習でデジタル機器を使う時間は参加国中最下位だ ※
多くの国々の子どもたちはデジタル機器を使って家でも学習できるようになっているのに
日本の子どもたちにとってデジタル機器は
チャットやゲームのためのマシンにしかなっていない
※国立教育政策研究所『OECD生徒の学習到達度調査(PISA)〜2018年調査補足資料〜』2019年より抜粋

引用元:まんがで知るデジタルの学び 100,101ページ

 

「子どもが学校から持ち帰った端末でゲームばかりやっている」という話もよく耳にします。学習に使えるようにするためには、日常的に思考力を働かせながら端末を「活用」する経験を積んでいくことが必要なのかもしれません。

教員の学び方もタブレット・PCで変えられる

端末の導入により、学び方を変えられるのは、子どもたちだけではありません。本書では、先生がたの学び方も変えていこうとしています。
研究授業の協議会などでも活用していくことができるのです。

 


まんがで知るデジタルの学び 122ページより

 

このやり方を使えば、先生方も子どもの学び方を知ることができます。また、時間短縮にもつながり、議論する時間が増えたり、業務を早く終えたりすることにもつながります。タブレット・PCの活用は、先生方の学びまで変えていくのです。

学びのために”デジタル”を使う:使うことが目的ではない!

今回は、「まんがで知るデジタルの学び」から一部引用しながら、学校でのタブレット・PC活用についてご紹介していきました。今学校で学んでいる子どもたちにとっては、デジタル端末は使うことが「当たり前」になっています。使うこと自体が目的になった授業ではなく、活用して子どもたちの学びを広げ、深める授業を計画し、少しずつでも実施していくことが大切なのではないでしょうか。

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