ChatGPTは人と会話しているかのようにやりとりができるAIで、対話似特化したWebサービスです。今回は、小学校の通知表の所見をこのChatGPTに書いてもらうことができるか試してみました。所見の文章を作成するのは時間もかかり、先生方の負担になる仕事の一つです。しかし、普段から見ている子どもたちの様子を伝える手段の一つでもあります。ChatGPTのようなAIが所見の作成を手伝うことができれば、先生方の負担も軽減するかもしれません!ChatGPTは先生たちの仕事をアシストすることはできるのでしょうか。
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目次
前提確認:ChatGPTに「所見」という言葉は伝わる?
「所見」といってもいろいろな意味があるので、「所見」という言葉についてまず尋ねてみました。
医療や法律などの分野の「所見」の説明を述べてくれました。
今回は教育の文脈で「所見」を使いたいので、教育の分野ではどのように用いられているか確認しました。
教育の文脈での「所見」も、だいたい共通理解(?)できています。
そこで通知表の所見の文章を書くお手伝いをお願いをしました。
快諾していただいたので、実際に所見の文章を書くことができるか試してみます。
実験1. ChatGPTにキーワードを与えて所見を作成してもらう
1つ目の実験として、いくつかのキーワードから、所見の文章を作成してもらいました。
児童の所見に入れたいキーワードを出していきます。
算数の学習を頑張っていた2年生の場合
児童像としては以下のようなイメージをしました。
そのイメージから、キーワードとして
算数、三角形と四角形、角の形、理解、友達、協力、配り係の活動
を挙げてみます。
〇〇君は、算数の授業で、三角形と四角形の角の形について理解を深めていました。クイズの問題を解くときも、落ち着いて考えて正しい答えを導き出していました。また、配り係の活動では、友達と協力して、スムーズに仕事をこなすことができていました。今後も、積極的に学習に取り組み、友達との協調性を発揮していってほしいと思います。(157文字)
キーワードから157文字で文章を作成することができました。この文章をベースとして、実際の子どもの姿にあった文章に書き換えることで、少しは所見作成の手間を削減できそうです。
生活科であさがおの世話を頑張っていた1年生の場合
次に、生活科の学習であさがおの世話を欠かさずに頑張っていた子を想定し、別のキーワードで作成してみました。
生活科、あさがおの世話、成長を観察、班のリーダー、提出物を集める、責任感のある行動
△△さんは、生活科のあさがおの世話に取り組んでいました。毎日の丁寧な手入れのおかげで、あさがおたちはどんどん大きく成長していました。また、班のリーダーとして、提出物を集めるなどの責任を持ち、クラス全体をまとめていました。成長を観察することができ、△△さんの責任感のある行動に感銘を受けました。今後も、このような責任感あふれる行動を継続していってほしいと思います。(181文字)
「あさがおたち」など若干不自然な言い回しもありますが、こちらの文章もベースとして活用することは可能でしょう。
1人目は「〇〇さん」としていたのに、2人目は「△△さん」としているところにも賢さを感じます。
このように、学習面、生活面のキーワードを入力することで、所見の文章のたたき台を作ることができました。
実験2. 評価規準と成績から所見の文章を作成してもらう
キーワードを与えると随分それらしい文章を作成してくれることがわかりました。しかしキーワードを出すこと自体がすでに負担であるという場合もあるかもしれません。
そこで、学習する単元の評価規準の文章と、評価項目を照らし合わせて文章を作成してもらえるか試してみました。生活面に関する記述は除き、学習面に特化した文章となります。
5年生算数の評価規準の文章と児童の評価を使って作成
啓林館の5年生算数の教科書から、「整数と小数」と「体積」の評価規準を引用させていただきました。3観点の名称については省略しています。児童の氏名もChatGPTに出力させた架空の名前です。
青木翔太さんは、整数と小数に関する理解力において優れた成績を収めています。整数と小数を10倍、100倍、1000倍した数や、1/10、1/100、1/1000にした数を求めることができることを理解し、思考力においても十進数の仕組みについて深く考えることができます。しかしながら、体積については、今後より努力をしていく必要があります。今回の成績評価が「B」となっていますが、積極的に知識の吸収と思考力の向上に努め、今後の成績向上を期待しています。(222文字)
安藤芽依さんは、整数と小数に関する思考力において優れた成績を収めています。十進数の仕組みや表し方に着目して、整数や小数を10倍、100倍、1000倍したり、1/10、1/100、1/1000にしたりしたときの小数点の移動の仕方を考えることができます。今回の成績評価が「B」となっていますが、今後より知識の吸収と思考力の向上に努め、更なる成績向上を期待しています。また、体積についても理解を深め、積極的に取り組むように期待します。(214文字)
少々堅苦しくなりましたが、評価規準の文言を活用して新たな文章が作成されました。
児童のよかったところを評価する文章にできるか?
上述の文章では、評価が「B」という点を強調されています。子どもの良かった点によりフォーカスした文章を作成するために、「A」の評価がついている部分について特に強調して記述するように頼んでみました。
青木翔太くんは、整数と小数の単元で「知識」にA評価をいただきました。小数が10倍、100倍、1000倍になると小数点がどのように移動するかを理解し、計算ができるようになっています。また、「思考」にはB評価をいただきました。今後は、もう少し考え方を深めて、小数点の移動についてさらに工夫していけると良いでしょう。体積の単元では、「知識」、「思考」、「態度」のいずれもB評価でした。今後は、計算についてもう少し自信を持って取り組めるように、定期的に練習するように心がけてください。(238文字)
安藤芽依ちゃんは、整数と小数の単元で「思考」にA評価をいただきました。小数の10倍、100倍、1000倍になると小数点がどのように移動するかを考え、自分なりの解き方を見つけていました。また、「知識」、「態度」にはB評価をいただきました。今後は、自分が考えた解き方が正しいかどうかをもう少し確認しながら進めることで、より深い理解を目指していきましょう。体積の単元では、「思考」にA評価をいただきました。自分で考えた公式や方法で、立方体の体積を求めることができました。また、「知識」、「態度」にはB評価をいただきました。今後は、自分で考えた方法が正しいかどうかを確認しながら、自分なりの計算方法を見つけていけるように努めましょう。(313文字)
文章のテイストが変わり、くん付け、ちゃん付けに変わりました。また、「A評価をいただきました」という文面になり、所見としては不自然になってしまいました。
ただ、一文ずつ見てみると、所見の文章にも使える表現が生成されています。
文章の長さを変えることができるか?
2人分の文章が少し長くなってしまったので、200文字以内にできるか試してみます。
整数と小数について、理解が深まってきましたね。特に知識については、Aの評価をいただきました。思考力や態度についても、今後もより深めていくよう取り組んでいきましょう。体積については、まだ少し苦手な部分があります。今後も問題に挑戦し、理解を深めるよう取り組みましょう。(132文字)
整数と小数については、思考力においてAの評価をいただきました。知識についても、よく頑張っていました。今後もより理解を深めるように取り組んでいきましょう。体積についても、思考力においてAの評価をいただきました。引き続き、問題に取り組みながら、知識の理解を深めていきましょう。(136文字)
「200文字以内」としたので、だいぶ短くなりました。短すぎて、詳しいことに言及することができなくなっています。
「150文字以上200文字以内」と再度指定して試してみます。
青木くんは、整数と小数について、知識面ではしっかりと理解している様子です。思考面においては、まだ考え方を深める余地がありますが、態度面においてはよく取り組んでいます。体積については、知識や思考にまだ若干の改善の余地があるようですが、学ぼうとする意欲がある点は評価できます。(136文字)
安藤さんは、整数と小数について思考面で優れた成績を収めています。知識面においては改善の余地がありますが、態度面においては学ぼうとする意欲がある点は評価できます。体積についても思考面で優れた成績を収めており、今後の成長が期待できます。(116文字)
また少しテイストが変わり、更に短くなってしまいました。指定の文字数に満たない状態で、評価規準の文言もあまり入っておらず、平たい文章になっています。
今度は逆に文字数を増やし「200文字以上250文字以内」としてみます。
整数と小数については、知識の点数がAとなっており、整数や小数を10倍や100倍、1/10や1/100などにした場合の数を求めることができます。思考についてはBで、小数の仕組みについて深く学ぼうとする態度が良いです。また、体積については知識、思考ともにBでした。今後も十進数の仕組みを深く理解するとともに、より正確に体積を求められるように取り組んでほしいと思います。(182文字)
整数と小数については、思考の点数がAとなっており、十進数の仕組みに着目して小数を10倍や1/10にした場合の小数点の移動の仕方を考えることができます。今後は知識と態度も同様にAの評価ができるように、十進数の仕組みを深く理解し、小数の表し方や計算を正確に行うことを目指してほしいと思います。体積については、知識と思考がBでした。今後は、立方体や複合図形の体積を求める方法を工夫し、正確に計算できるように努めてほしいと思います。(212文字)
青木さんの文は指定した文字数に収まっていません。ですが、前の2つよりは単元で学習した内容について触れた文章を作成することができました。
全体として、日本語での文字数をカウントするのは難しいのかもしれません。
どの文章も、そのまま所見の文章に使うわけにはいきませんが、たたき台として活用することはできそうです。
ChatGPTで所見のたたき台を作成することは可能!AIが先生のアシスタントになる日も近い?
今回はChatGPTで小学校の通知表に使える所見が書けるか試した結果をご紹介しました。ChatGPTが作成した文章をそのまま使うというのは難しいですが、キーワードを入れたり、評価を入力することで、ある程度参考になる文章を生成することができました。
AIが先生方のアシスタントとして活躍する日もそう遠くはないかもしれません。興味のある方は試してみてはいかがでしょうか。
参考
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啓林館 算数 5年生 評価規準