学校現場の声を届ける!School Voice Projectってなに?
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教員不足や厳しい労働実態、免許更新制の撤廃など、教員に関する社会問題が話題になることが多くなっています。しかし、学校の外にいると、実際現場ではどんなことが起こっているのか理解しにくい部分もあります。教員や学校教育に関わる人と、現場から離れている人では、同じ問題についても捉え方に大きな差があることも事実です。学校現場の声を知ってもらうために動いているSchool Voice Projectという取り組みをご紹介します。

フキダシとメガホンで学校現場の声を見せる&届ける

学校現場の声を「見える化」する”フキダシ”

School Voice Projectには、大きく2つの取り組みがあります。一つが「フキダシ」です。
フキダシは、Webアンケートサイトで、学校現場の声を集めるプラットフォームになっています。学校現場で働く方が会員登録すると、アンケートに回答したり、聞きたいことを書き込んだりすることができるものです。書き込まれたた質問の中からアンケートが作られることもあるようです。「異動って大変…。どうなればいい?」「家庭・児童生徒との連絡のICT活用状況」などの質問が掲載されています(2022年6月2日現在)。
フキダシ 学校現場の声を見える化するWEBアンケートサイト

現場の声を社会に届ける”メガホン”

School Voice Projectのもうひとつの取り組みが「メガホン」です。「メガホン」は、「フキダシ」で集められた現場の声を集計しわかりやすく社会に伝えるためのページです。noteにまとめられており、グラフや図解を用いて、アンケート結果を詳しく公表しています。また、その声を社会に届けるため、大阪府議会議員の方と現職の先生などで「学校の現実を議員さんに伝える会」というイベントなども実施されています。

現場の声を届け、施策に繋げる。「学校の現実を議員さんに伝える会」イベントレポート
放課後に消毒、帰宅後も仕事「担任つらい」 教員が大阪府議に訴える
インクルーシブ教育背景「40人超」学級の深刻さ訴え 教職員と府議会議員が会合

教育現場と社会の意識の乖離~教員免許更新制度をめぐって

2022年5月11日には、教員免許更新制度の撤廃を盛り込んだ改正法案が成立しましたが、決定前にこの制度をめぐって、フキダシでもアンケートが行われていました。
改正前の教員免許更新制は、2009年に導入されたものです。教員免許の有効期限が10年とされ、更新のためには、更新前の2年間で30時間以上の講習を自費で受け、修了認定を受ける必要がありました。
School Voice Projectが2021年9~10月に実施したアンケートでは、96件の回答のうち、87.5%の方が「廃止に賛成=教員免許更新制は必要ない」と答えたという結果が出ています。
廃止に賛成した方のうちの半数以上が、その理由として「金銭、時間、精神的な負担が大きいから」と回答しています。
廃止に賛成=教員免許更新制は必要ない 84人(87.5%)

出典:【教職員対象アンケート結果】教員免許更新制廃止の是非と今後の研修制度のあり方について

教員免許を保有していない人の考えは…

同様の項目のアンケートが、日本トレンドリサーチで行われています。こちらは改正法案が決定されたあとの2022年5月18~24日に行われています。集計対象者は600名で、教員免許を保有しており、現役の教員の方が4.2%、現役ではないが教員免許を保有している人が15.8%、教員免許を保有していない人が80%という分布です。
現役の教員である人に限って回答を見ると、88.0%が賛成、8.0%がどちらかというと賛成、4%がどちらかというと反対という結果が出ており、こちらはSchool Voice Projectに近い結果になっています。
他方、教員免許を保有していない人に限って回答を見ると、教員免許の更新制度が廃止されることにどちらかというと反対の人が33.8%、反対の人が23.8%となっており、半数以上の方が反対している結果になっています。教育現場の先生との意識の乖離が非常に大きいことがわかります。
現場の先生と、教員免許を保有していない人の意識の乖離が非常に大きいことがわかる。

日本トレンドリサーチのアンケートの自由記述では、以下のように、教員免許の更新を通して、教員としての知識をアップデートを求めているような声があがっていました。

ただでさえも不祥事が多発している教員資格。さらに次々と変化していく社会情勢。教員の適正も都度確認するべきだと思う。更新期間を短くするのならば分かるが廃止とは考えられない。(60代・男性・「保有していない」)

一度資格を取得したからと言って、その後何も課されないと適当になる教師が出てくると思うから。(20代・女性・「保有していない」)

10年たつと色々変わる面もあるので特に教師のように他人に教える立場の人は更新制度は必要だと思う。(70代・女性・「保有していない」)

学校現場は学びに前向き、その機会もすでにある

しかし、現職の教員には、初任者研修や中堅教諭等資質向上研修などの都道府県教育委員会が実施する研修や、校内研修など、さまざまな研修があるのが実情です。

教員研修の実施体系
出典:文部科学省 教員研修の実施体系

School Voice Projectでの「廃止に賛成」を選んだ方の代表的な意見を詳しく見てみると、28.6%の方が「現場で役に立つような研修内容ではないから」という理由を選択していました。「受けたい研修が受けられないから」という理由を選択している方も11.9%います。具体的には以下のような声がありました。

研修先が在住地から通いやすく、学びたいと思ったものはすぐに埋まってしまって、研修先がなかなか決まらず困りました。【小学校】

教員はプロである以上、研修研究が必要であることは当然です。しかし現状の更新講習はそのようなものとは言えません。また、酷いものではテレビを観るだけで受講費を取られるものもあります。同時に自治体の10年研修と内容が被っていることも多く合理的とは言えません。教員が広く深く教養と知識を身に付けられる環境づくりが必要と考えます。【高等学校/特別支援学校】

つまり、現場で働いている先生方は、学びたいという思いを持っており、そのための研修の場もすでに用意されている状態で、さらに煩雑な手続きや自費を伴う免許更新制度は撤廃したほうがよいと考えていると解釈できます。こういった現場の声は社会一般にはあまり浸透しておらず、捉え方に乖離があるというのが現状です。

届きはじめた学校の声~#教員不足をなくそう

実際の声が一般の人がアクセスできる場に「見える化」されたからこそ、このような乖離が見えてきたとも言え、School Voice Projectの意義が発揮されていると考えられます。論点は、教員免許更新制度撤廃だけではありません。School Voice Projectが2022年5月9日、教員不足への対処法への提言を行っています。それに伴い、#教員不足をなくそう 緊急アンケートを行い、1000件以上の教員の回答が集まったということです。
提言は「応急処置」「体質改善」「根本治療」という3つの観点からまとめられています。多忙な働き方を改善して教職志望者を増やすことや、国の財政支援によって正規教員の定数を広げること、特別免許状の適用条件を緩和することなど、短期的な施策から長期的で踏み込んだ改革にまで及んでいます。
この政策提言は新聞記事やWebメディアにも取り上げられ、まさに学校現場の声が届き始めていると言えるでしょう。

「教員不足への対処法、3つの観点で提言 末冨氏・妹尾氏ら」教育新聞
「教員不足解消へ「多忙な働き方、改善を」 現役教員らが提言発表」毎日新聞
「担任の先生が「未定」「給食時間に交代」。深刻化する教員不足、教育学者らが「公教育の質が危うい」と警鐘」huffpost

学校現場のためにできることは

教育の分野における課題は山積しています。しかし、どれもすぐに解決できることではないのが現状です。それでも、学校現場の声を聞くことがその解決の一歩になるかもしれません。学校の外からまずできることは、知ることです。もし、あなたが学校の中にいるなら、ご自身の思いを外に出して、伝えることができます。伝えることも、知ることも、School Voice Projectからはじめてみてはいかがでしょうか。

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