ヒントはここにも!学校改革を推進する経産省「未来の教室」ってなに?
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GIGAスクール構想、キャリア教育、プログラミング教育など取り組むべき課題が多い学校現場に対し、文部科学省からさまざまな施策が出されています。しかし、山積する問題へ関わっているのは文部科学省だけではありません。経済産業省も「未来の教室」と題して教員の働き方改革やEdTechの情報提供が行われています。「未来の教室」とはなんなのかご紹介します。

「未来の教室」は令和の教育改革プロジェクト!

「未来の教室」は、社会が大幅に変化しているにもかかわらず、昭和から平成と大きな形を変えずに進められてきた学校教育を変化させることを目指したプロジェクトです。学校での取り組みは日々変化していますが、「教室で、同じ年齢の児童生徒に向けて、先生が一斉授業を行う」という大きな枠組みは未だ変わっていません。それが悪いことだとは言えませんが、時代に沿って変わる部分が必要なことは確かです。「未来の教室」は、学びのSTEAM化、学びの自律化・個別最適化・新しい学習基盤づくりの3つをビジョンとして掲げ、アクションを定めています。

「未来の教室」構築に向けた3つの柱と9つのアクション

先述の3つのビジョンを柱に、それぞれに課題が3つずつ挙げられ、それに対するアクションが宣言されています。

教育改革の柱1:学びのSTEAM化

学びのSTEAM化とは、以下のように説明されています。

教科学習や総合的な学習/探究の時間、特別活動も含めたカリキュラム・マネジメントを通じ、一人ひとりのワクワクする感覚を呼び覚まし、文理を問わず教科知識や専門知識を習得する(=「知る」)ことと、探究・プロジェクト型学習(PBL)の中で知識に横串を刺し、創造的・論理的に思考し、未知の課題やその解決策を見出す(=「創る」)こととが循環する学びを実現すること。

課題:STEAM学習プログラム・授業編成モデル・評価手法の不足
→アクション:インターネット上に「STEAMライブラリー」、地域に「STEAM学習センター」を構築

課題:学校現場は知識のインプットで手一杯であり、探究・プロジェクト型学習(PBL)を行う余裕がないこと
→アクション:知識はEdTechで学んで効率的に獲得し、探究・プロジェクト型学習(PBL)に没頭する時間を捻出

課題:他者との協働の基礎となる情動対処やコミュニケ―ションが難しい子どもも少なくないこと
→アクション:幼児期から学齢期にかけての基礎的なライフスキルや思考法の育成

参考:未来の教室ってなに?

教育改革の柱2:学びの自律化・個別最適化

一人ひとり違う認知特性や学習到達度等をもとに、学び方を選べる学びを目指していくための課題とアクションが挙げられています。

課題:一律・一斉・一方向型授業の神話
→アクション:知識の習得は、一律・一斉・一方向授業から「EdTechによる自学自習と学び合い」へと重心を移行

課題:一人ひとりの学習者の個性(認知特性や理解度や興味関心)への細やかな対応の不足
→アクション:幼児期から「個別学習計画」を策定し、蓄積した「学習ログ」をもとに修正し続けるサイクルを構築

課題:授業時数・学年・居場所の制約(履修主義・学年制・標準授業時数、狭い「対面」の考え方)
→アクション:多様な学び方の保障(到達度主義の導入、個別学習計画の認定、ネット・リアル融合の学び方の導入)

参考:未来の教室ってなに?

教育改革の柱3:新しい学習基盤づくり

課題:EdTechを活用するには、学校ICTインフラがあまりに貧弱なこと
→アクション:ICT環境整備(1人1台パソコン・高速大容量通信・クラウド接続の実現、調達改革・BYOD・寄付)※一部は『GIGAスクール構想』として進行中

課題:教師も子ども達も手一杯で、創造性を発揮する余裕がないこと
→アクション:学校BPR(業務構造の抜本的改革)の試行・普及、部活動に縛られない放課後の充実

課題:学校BPR(業務構造の抜本的改革)の試行・普及、部活動に縛られない放課後の充実
→アクション:教師自身がチェンジ・メイカーとして、学校外の人材と学び協働し続ける環境づくり

参考:未来の教室ってなに?

上記9つのアクションを通して、「未来の教室」を実現しようとしています。

きっと先生の助けになる!「未来の教室」コンテンツ

「未来の教室」を実現していくために、4つのコンテンツが用意されています。

動画教材がたくさん!STEAMライブラリー

STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(人文社会・芸術・デザイン)、Mathematics(数学)の頭文字を取った言葉です。学びにSTEAMの要素を取り入れられるように、STEAMライブラリーでは、探求型の学習で活用できる動画などの教材が提供されています。SDGsなどに関連するものなど児童生徒の興味関心を引くテーマの資料が用意されています。

参考:STEAMライブラリー

学校で使える!EdTechライブラリー

EdTechライブラリーでは、学校で活用できる様々なEdTechツールが紹介されています。強化学習に使えるものはもちろん、学習管理や校務支援に活用できるものもあります。

参考:EdTechライブラリー

学校の働き方改革はこうする!学校BPR

BPRとは、Business Process Re-engineering の略で、働き方改革で用いられる手法です。学校の働き方改革を推進するために、BPRの手法で学校の業務を見直し、どのような働き方改革ができるか検討されています。

なぜ先生が忙しいのかなど、様々な要素に分解されて検討されており、現場で働いていると気づかない点にも目を向けることができそうです。

参考:学校BPR

事例が知りたいときに役立つ!未来の教室通信

未来の教室通信はニュースレターとなっており、各学校での事例が紹介されています。メールアドレスを登録すれば、マガジンが配信されますが、このページから過去のニュースレターもPDFでチェックすることができます。

参考:未来の教室通信

「未来の教室」は現場にある!

経済産業省のプロジェクト「未来の教室」について紹介してきました。感染症拡大の影響で1人1台端末の導入が一気に進むなど、「未来の教室」の実現が近づいてきています。しかし、いくら構想が充実したとしても、現場にいる先生や子どもたちが「未来の教室」のよい部分を享受できなければ意味がありません。STEAM教材の提供など、比較的容易に実践できるようにアクションがなされています。すぐにできそうなものは教室での実践に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考)
経済産業省 「未来の教室」とEdTech研究会 第2次提言
未来の教室
STEAMライブラリー
EdTechライブラリー
学校BPR
未来の教室通信

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