公立の小中学校で通常学級に所属する児童・生徒のうち、約8.8%の子どもたちが学習面や行動面で困難を示しており、支援が必要な状態であることが調査により文科省の調査で判明しています。また、先日「生徒指導提要」が改訂され、支援が必要である家庭の子どもたちについて新たに記述されました。困難を抱える子どもたちは多く存在するものの、その困難の種類も程度も一人ひとり異なります。今回は、そういった子どもたちにかかわる大人が読んでおきたい本を3冊ご紹介します。
目次
子どもの精神障害について基本を丁寧に「子どものための精神医学」
タイトル:子どものための精神医学
著者:滝川一廣
本書は、子どもの精神障害について取り扱っています。「子どもは育ちつつあるもの、成長途上の存在である」「子どもとは社会のなかを生きている存在である」「子どもの育もケアもマニュアルどおりにはいかない」という観点を基本としながら、「〈こころ〉をどう捉えるか」を入り口に、精神医学がどのように誕生し発展してきたかの道を辿り、発達障害をもつ子どもたちについて、発達障害をもつ子どもたちの親や支援者について、発達障害をもつ子どもたちが社会に出ていくことについて、わかりやすく書かれています。
障害の「害」という字について説明した上で「障害」という表記を使っていたり、発達障害の診断がどのようにできてきたかを説明した上で診断名がつくことについて説明していたりと、非常に細かく丁寧です。教科書的な解説にとどまらず、実際の子どもたちがどのように感じているか、そういう子たちへどのような支援が考えられるかが記載されており、現場の参考になる点ばかりです。
非認知能力を伸ばすためにできることとは「私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む」
タイトル:私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む
著者:ポール・タフ 訳:高山真由美
やり抜く力・好奇心・自制心などの力は「非認知能力」と呼ばれています。本書では、子どもの貧困は、これらの非認知能力を獲得する機会を奪い取ってしまうという指摘をしています。アメリカでは子どもの貧困率が約50%と言われており、その状況でも子どもたちの非認知能力を伸ばすための取り組みが数多く行われており、その実践から得られた知見が本書でまとめられています。
引用されている事例はアメリカのものではありますが、学習を安定させていくためのポイントや、規律の重要性、動機付けなどについて、根拠となる論文のデータとともに説明しています。どのような方法を取れば子どもたちの非認知能力を伸ばすことができるか、本書から学ぶことができるでしょう。
子どもの貧困の状況を知る「子どもの貧困対策と教育支援」
タイトル:子どもの貧困対策と教育支援──より良い政策・連携・協働のために
編集:末冨芳
子どもの貧困や教育支援について、現場での実践を重ねる方や研究者の方などの複数の方々による提案や分析をまとめた一冊です。現在の制度などについての知識を整理するためにも役立ちます。また、教員だけではなくスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、行政担当者など複数の目で子どもたちや家庭を支えていく実践例や、貧困の当事者目線から見た対策の必要性なども読むことができます。子どもにかかわる立場の方は知っておくとよい視点を得ることができるでしょう。
子どもにかかわる立場の方はご一読を!
今回は発達障害や子どもの貧困の問題などに関連した書籍をご紹介しました。どの本も子どもたちにかかわる方であれば子どもの具体的な姿を想像しながら読むことができる本です。子どもとの関わり方を見直したくなったとき、学び直したくなったときなどにおすすめです。手に取ってみてはいかがでしょうか。