学校の先生へ!ChatGPTをはじめとする生成AIの活用術#3
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生成AIツールの代表格であるChatGPTのサービスがリリースされてまもなく1年です。子どもが宿題に使うのではないか、事実と異なる情報が生成されるのではないか、など批判的な捉え方もありましたが、今では多くのツールに生成AIが搭載され、一般的になってきています。
小学校、中学校、高校の先生も、いきなり授業で使うのは難しいとしても、職員室で業務改善のために使うことはできるでしょう。プランプランは、学校の先生方向けに、ChatGPTなどの生成AIツールを業務改善の観点で使えるシーンを計4回の連載でご紹介します。

 

こんなことありませんか?学校現場でちょっと手間なアレコレ

学校現場で働いていると、児童生徒のためを思ってやること、学校全体のために行う業務など、先生の仕事は多岐に渡ります。
その中で、ちょっと時間がかかってしまうような作業もあるのではないでしょうか。
例えば、

  • ちょうどいい挿絵がなく、イラストや写真を探したい
  • 保護者へのお便りの文面がなかなか書けない
  • 学習活動の案をもうひとひねりしたいけど、案が思いつかない
  • 個別指導をしたいけれど間に合わない

など。
こういった面は、ChatGPTをはじめとする生成AIで解決できるかもしれません。第3回は、学習活動の案が思いつかないという場面の活用方法をお伝えします。

生成AIを遠慮のいらない壁打ち相手として使う

ねらいを達成するための学習活動に一捻り加えて面白くしたい、でもいい案がなかなか思い浮かばない…ということがあるかもしれません。そういう時は、生成AIを遠慮のいらない壁打ち相手として活用することで、自分の考えをブラッシュアップできるかもしれません。生成AIは人間ではないので、アイディアを大量に出してもらうこともできますし、相談する時間が早朝でも深夜でも大丈夫です。遠慮はいりません!納得するまで続けられます。

学習活動のアイディア出しを手伝ってもらう

まずは、学習活動のアイディア出しを手伝ってもらうケースをご紹介します。
対象を小学校4年生、教科は国語、新出漢字の学習活動のアイディアを出してもらうことにします。

プロンプトの例)

あなたは小学校の教員です。子どもたちが楽しめる学習活動のアイディアを、以下の条件に基づいて10個作成してください。

#条件:
対象学年:小学校4年生
教科:国語
教材:新出漢字の練習

プロンプトの最初に、生成AIにどのように振る舞って欲しいのかを書き、さらに実際の内容を続けます。

このプロンプトをChatGPTで実行すると、以下のアイディアが出力されました。

ChatGPT(GPT-4)の出力

小学校4年生を対象にした国語の授業で、新出漢字の練習を楽しむためのアクティビティを考えてみましょう。

  • 漢字ビンゴゲーム:
  • 漢字ビンゴカードを作成し、先生が読み上げる漢字の意味や、その漢字が含まれる単語を聞いて、生徒たちはカード上の漢字を探してビンゴを目指します。
  • 漢字カルタ:
  • 新出漢字とその意味が書かれたカルタを用意し、読み上げる人が読む側のカードから読み上げると、生徒たちは対応する漢字が書かれたカードを早押しで取るゲームです。
  • 漢字リレー:
  • 生徒たちを数グループに分け、黒板に向かってリレー形式で漢字を書かせます。一人が書き終わったら、次の子が走り出て次の漢字を書くという形式です。
  • 漢字シャドウイング:
  • 先生が漢字の読み方を言い、生徒たちは後ろを向いて聞き取り、どの漢字かを書き取る活動です。聞き取り能力と漢字の知識が同時に養えます。
  • 漢字ピクトグラム:
  • 生徒たちに新出漢字を使って簡単な絵を描かせ、それがどのような漢字を表しているのかをクラスで当てさせます。例えば、「木」の漢字を木の絵に見立てて描くなど。
  • 漢字ダービー:
  • クラスを二つのチームに分け、黒板に漢字を一つずつ書いていき、先に間違えずに書けたチームが勝ちというゲームです。
  • 漢字物語作り:
  • 与えられた新出漢字を使って、グループごとに短い物語を作らせます。創造力と漢字の理解が深まります。
  • 漢字検索クエスト:
  • 教室内に隠された漢字カードを生徒たちに探させ、見つけた漢字の意味や使い方を説明させるスカベンジャーハント形式のゲームです。
  • 漢字伝言ゲーム:
  • 生徒たちが円になり、先生が最初の生徒に新出漢字を耳打ちします。その生徒は隣の生徒に漢字を伝え、最後の生徒がその漢字を板書します。途中で伝わる漢字がどのように変わっていくかを確認します。
  • 漢字タッチ:
  • 教室の壁に新出漢字を大きく貼り付け、先生が単語を言うと、生徒たちはその漢字が含まれる単語の漢字をタッチするゲームです。反射神経と漢字の知識が必要です。

これらの活動は、漢字をただ書くだけでなく、読む、聞く、話すといった多角的なアプローチを取り入れているため、子どもたちの異なる学習スタイルに対応しつつ、楽しく漢字を学ぶことができます。

教育書のようなものや学習指導アイディアの中でも紹介されていそうな活動例が出力されました。

学年を変えるとどうなるでしょうか?このチャットに続けて

では、小学校1年生ではどうですか?

と投げかけてみます。

ChatGPT(GPT-4)の出力

小学校1年生の生徒たちに新出漢字を教える際には、より遊び感覚を取り入れたシンプルで楽しい活動が効果的です。ここでは、基礎的な漢字学習に焦点を当てたアクティビティをいくつか挙げてみましょう。

  1. 漢字マッチングゲーム:
    絵カードと対応する漢字カードを用意し、子どもたちにマッチングさせます。例えば、「犬」の絵と「犬」の漢字をペアにするなど。
  2. 漢字トレジャーハント:
    クラス内に隠された漢字カードを見つける活動をします。見つけたら、その漢字の意味を言ったり、簡単な単語を作ったりすることができます。
  3. 色分け漢字:
    生徒たちに、漢字の一部を特定の色で塗らせます。例えば、水の「氵」の部分を青色で塗るなど、漢字の構造を理解するのに役立ちます。
  4. 漢字ミミクリ:
    先生が漢字を大きく見せてその形を説明し、子供たちはそれを空中に指で書いたり、背中に書いてペアに当ててもらうなどのミミクリ遊びをします。
  5. 漢字のドミノ:
    漢字カードをドミノのように並べ、生徒たちは漢字の読みや意味を言いながら次々と倒していくゲームです。
  6. 漢字ダンス:
    漢字に合わせた身振り手振り(例えば「上」は手を上げる動作)を作り、音楽に合わせて漢字ダンスを行います。動きで覚えることで記憶に残りやすくなります。
  7. 絵日記で漢字練習:
    日々の絵日記に、学んだ漢字を使って簡単な文章を書かせます。親しみやすい日常の出来事と結びつけることで、漢字への興味を深めます。
  8. 漢字クレヨンアート:
    新出漢字を大きく書いた紙に、クレヨンで色を塗り、漢字の形を装飾します。このアート活動を通して視覚的に漢字を覚えることができます。
  9. 漢字パズル:
    漢字をパズルのピースにして、子供たちが正しい漢字を組み立てるゲームです。この活動は、漢字の形を理解するのに役立ちます。
  10. 漢字劇場:
    生徒たちに、学んだ漢字が登場する簡単な劇を演じさせます。例えば、「日」「月」「山」などの自然に関連する漢字を使って、自然の風景を表現する小さなストーリーを作ります。

これらのアクティビティは、1年生の子供たちが直感的に漢字を学ぶのを助け、同時に創造力や想像力を育てながら楽しませます。

このように出力され、学年に応じて異なる雰囲気の活動を選んで出力してくれることがわかります。

10個のアイディアでは足りなかったら、

あと10個アイディアをください

なんていうと、さらにアイディアを出してもらうこともできます。

「対話型」なので、アイディア出しも1ターンで終わらずに、自分が考えていることを伝えると、より実用的な案になっていくかもしれません。生成AIに完璧なアイディアをつくってもらうわけではなく、ここで出力されたものをヒントにして、子どもたちの実態に合わせた学習活動をブラッシュアップさせるやり方で活用できるでしょう。

生成AIで「専門家」を呼び出す!架空の会議も開ける

「アイディアを出して」と頼むだけではなくて、その道の専門家として振る舞ってもらうこともできるんです!

例えば、小学校5年生の総合的な学習でSDGsを取り上げる場合を想定します。担当する先生ご自身がさまざまな観点を考慮して単元を計画すると思いますが、その過程で、SDGsに詳しい人に意見を聞きたいと感じることがあるかもしれません。そういうときは、生成AI上にその「専門家」を呼び出して、検討会議を開いてもらいましょう!

プロンプトの例

小学校5年生がSDGsについて学ぶ授業を計画します。どんな学習を行うか、担任の先生と、SDGsに詳しい有識者で授業の内容を検討します。会議を始めてください。

あまり詳しい条件などは書かず、一旦丸投げで「会議をはじめてください」とします。そうすると、架空の会議が始まります。

ChatGPT(GPT-4)の出力

担任の先生:「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。今日は小学校5年生がSDGs(持続可能な開発目標)について学ぶ授業計画について、アイデアを出し合っていきたいと思います。子どもたちにとって理解しやすく、かつ、将来にわたって役立つ知識を身につけられるような授業内容を考えましょう。」

SDGsに詳しい有識者:「はい、ありがとうございます。SDGsは17の目標から成り立っており、それぞれが地球規模の課題に対応しています。小学5年生向けには、まずはSDGsが何であるか、なぜ大切なのかを理解してもらうことが大切だと思います。」

担任の先生:「そうですね、基本的な理解から始めて、子どもたちの日常生活とどうつながっているかを示すことが重要だと思います。例えば、水や電気を無駄にしないことがどうSDGsに貢献しているのかというように。」

SDGsに詳しい有識者:「それに加えて、各目標に関連する簡単な活動やゲームを取り入れることで、楽しみながら学べる環境を作ることもできますね。たとえば、クラスで小さなプロジェクトを立ち上げて、地域社会での小さなアクションを経験するなどです。」

担任の先生:「素晴らしいアイデアですね。また、国際的な視点も重要ですから、他国の子どもたちがどのようにSDGsに取り組んでいるかを紹介するのもいいかもしれません。」

SDGsに詳しい有識者:「はい、同意見です。また、現実の問題を学ぶために、ニュースを題材にしたディスカッションを行うのも有効です。これにより、子どもたちは世界で起こっていることについて考え、それがSDGsの目標にどのように関係しているかを理解することができるでしょう。」

担任の先生:「それでは、このアイデアを基に、次のステップとして、具体的な授業計画の概要を作成しましょう。各目標をどのように紹介し、活動に結び付けるか、みなさんの意見を伺いたいです。」

このようにして授業計画の初期段階の討議が始まるでしょう。授業では、各SDGsの概要、日常生活との関連、地域社会や世界での実際の取り組み例、そしてクラスでのプロジェクトや活動を通じて、SDGsについての理解を深める内容が含まれることになります。

架空の会議ではありますが、

  • クラスで小さなプロジェクトを立ち上げて、地域社会での小さなアクションを経験する
  • 他国の子どもたちがどのようにSDGsに取り組んでいるかを紹介する

などのアイディアが出てきます。実際に先生方で話し合った中でも、出てくる可能性のありそうなアイディアです。

話の流れが再現されるので、自分で考えていた内容の補強になったり、新しい視点を得られたりするかもしれません。

この架空の会議では「次のステップとして具体的な授業計画の概要を作成しましょう」として終了しています。ですので、次のプロンプトに

会議で話し合ったことを元に、授業の計画を立てます。授業5コマ分の授業計画と、そこで使うワークシートを作成してください。検討が必要な項目がある場合は、有識者と話し合いをしてください。

と入力すると、さらに詳細な授業計画が出力されます。
その計画に対してさらに、

はじめに会議を行った有識者の方に、この計画を確認していただきます。フィードバックをお願いします。

と入力すると、初めの架空の会議に登場した「SDGsに詳しい有識者」がフィードバックをしてくれるんです。

このように、自分と生成AIの対話ではなく、生成AIの中に人格を作り、その人たち同士で会話をしていくような流れにすると、自分の専門分野外のことでも、専門家に意見を聞いたような情報が得られます。
もちろん生成AIの特性上ファクトチェックは必要ですが、自分の思考を深めるきっかけとして活用するには十分な範囲になるのではないでしょうか。

「生成AIに壁打ち」で思考を広げよう

今回は「生成AIを遠慮のいらない壁打ち相手として使う」ケースをご紹介しました。どのケースも、ChatGPT(GPT-4:有料版)が最も精度が高いですが、Bing Chat(無料)や、ChatGPT(GPT-3.5:無料版)Claude 2(無料)でも実行することができます。

目の前の子どもたちに向き合った学習計画を考えることこそ、先生の仕事の本質的な部分かもしれません。だからこそ考えるのに時間がかかってしまうものです。考えが止まってしまったときは、一旦、生成AIに壁打ち相手になってもらってはいかがでしょうか。考えをさらに広げたり深めたりするきっかけになるかもしれません!

今回紹介した生成AIツール

今回紹介したツールは以下の表にまとめています。基本的には無料で試すことができるものばかりです。

ツール名 タイプ 料金
ChatGPT 対話型 無料(GPT-3.5のみ)
$20/月(GPT-3.5及びGPT-4)
Bing Chat 対話型 無料
※ブラウザ”Edge”上で使うとより便利
Claude 2 対話型 無料
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