学校の先生の働き方改革をめぐって、給特法の改正を含めた議論が始まるなど取り組みが進んでいます。現行の給特法は、令和元年に改正されており、自治体が条例を整備すれば、1年間の変形労働時間制とし、長期休業がある時期に休日を「まとめ取り」できるようにすることも可能となっています。この制度では先生方の業務量を減らしたり働き方を改善したりすることは難しいですが、いくつかの自治体では条例の整備等が進められています。2022年12月に文部科学省が公開した「学校の働き方改革のための取組状況調査の結果」から、学校の働き方改革の現状のポイントを2つご紹介します。
調査の概要
学校の働き方改革のための取り組み状況調査は、平成28年から行われています。令和元年にリニューアルされ、各教育委員会や学校における働き方改革の取り組みを促すことを目的として行われています。
平成28年度から調査開始。中央教育審議会答申※を踏まえ令和元年度に全面的にリニューアル。各教育委員会や学校における働き方改革の進捗状況を明確にし、市区町村別の公表や取組事例の展開等を通じて、働き方改革の取組を促すことを目的とするもの。 今年度についても、昨年度と同様に項目を限定しつつ、学校及び教師が担う業務の明確化・適正化がどの程度進んでいるかのフォローアップを行うため、調査を実施。
令和4年度 教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査【結果概要】より
今回の調査は令和4年9月1日時点が基準日となり、47都道府県教育委員会、20指定年教育委員会、172市区町村教育委員会・事務組合等のを対象に行われました。
ポイント1:小学校・中学校の時間外労働の現状
時間外勤務の状況としては、「4〜7月の時間外勤務の平均」をとり、例年と比較しています。
時間外勤務の平均が月45時間以下だった割合は、小学校で63.2%、中学校で46.3%でした。令和元年度と比較すると、どちらの区分でも10ポイント以上増えていますが、令和3年度と比べると、その差は約2ポイント程度にとどまります。
また、小学校では32.5%、中学校では40.0%が月の残業時間が45〜80時間となっており、長時間労働が解消しているとは言えないのが現状です。
しかし、勤務実態を把握するための具体的な方法を見ると、ICカードやタイムカード、パソコンの使用時間等の記録など客観的な方法で勤務実態を把握している割合が高くなり、都道府県、政令市では昨年度から引き続き100%、市区町村でも昨年度の85.9%から93.3%に上昇しました。適正な勤務実態の把握が進んでいっています。
ポイント2:休日の「まとめ取り」のための変形労働時間制に関する条例の整備の現状は
令和元年に給特法が改正され、自治体が条例を整備すれば、変形労働時間制を実施することができるようになりました。年間の業務の繁閑に合わせて勤務時間を柔軟に配分することにより「休日のまとめ取り」をすることができるようにするものです。
実際、変形労働時間制に関する条例を令和3年までに整備した自治体は都道府県で23.4%、政令市で5%にとどまります。条例の整備を行うか否かを含め検討中であるのが都道府県で51%、政令市で75%を占めました。
この条例の整備は、各自治体で状況を鑑み実施するかどうか選択できるものであり、必ずしも実施率の高低が望ましい・望ましくない状況を表しているものではありません。しかし、法改正から4年経ち、半数以上が実施していない現状を見ると、自治体にとって有益なものであったかどうか検討することも必要かもしれません。
学校の働き方改革に向けて活発な議論を
学校の働き方改革のための取組状況調査の結果から、時間外勤務の状況と、変形労働時間制に関する条例の整備状況についてご紹介しました。
文部科学省が公開している資料では、都道府県ごとの結果や全ての集計など細かいデータも掲載されています。ご関心のある方はそちらもご覧ください。
参考資料:
文部科学省
「令和4年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」
【パンフレット】教育職員の一年単位の変形労働時間制