新たに設置される「こども家庭庁」、創設の背景やその役割とは

2022年6月15日、「こども家庭庁」設置法とこども基本法が参議院本会議で可決、成立しました。来年4月に内閣府にこども家庭庁が発足されることになります。そのネーミングから議論を巻き起こしていましたが、どのような背景で設置されることになったのでしょうか。また、発足したらどのような役割をもつことになるのでしょうか。

こども家庭庁創設の背景〜こども政策の基本理念

子どもに対する様々な課題に対応する「こども政策」推進にあたり、司令塔の役割としてこども家庭庁は創設されることになりました。そもそも「こども政策」とはなんなのでしょうか。

こども政策の「こども」って誰?

こども政策、こども家庭庁など、この文脈では、「こども」がひらがなで表記されています。
その意図としては

  • 法令によって「子ども」「児童」「青少年」など年少者や若年者を表す言葉が異なる
  • 法令上定義がされていない表記もある
  • 当事者であるこどもたちにもわかりやすくする

という点が挙げられています。
そして、「こども」とは、

大人として円滑な社会生活を送ることができるようになるまでの成長の過程にある者をいう

とされています。
こども政策の新たな推進体制に関する基本方針~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~1.はじめにより

こども政策の考え方とは

こども政策の基本理念として、以下の6つが掲げられています。

  • こどもの視点、子育て当事者の視点に⽴った政策立案
  • 全てのこどもの健やかな成長、Well‐beingの向上
  • 誰⼀⼈取り残さず、抜け落ちることのない支援
  • こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ⽬ない包括的な⽀援
  • 待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
  • データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)

これらを実現していくためには、これまでのように複数の省庁にまたがった管理をしていくのではなく、司令塔の役割が必要となり、こども家庭庁の創設が提案されたのです。こどもへの支援やこどもに関わる取り組みが、省庁のはざまで支援が抜け落ちることなく実施されることが期待されています。
ただし、こどもにとって必要な教育は、現行と同じく文部科学省の下で充実が図られることになっています。

基本理念を子どもの言葉で置き換えると

このこども政策は、こども向けの資料でも解説されています。
こどもの視点、子育て当事者の視点に⽴った政策立案
こどもや子育てをしている人の目線に立った政策を作ること
全てのこどもの健やかな成⻑、Well‐beingの向上
すべてのこどもが心も身体も健康に育ち、幸せになること
誰⼀⼈取り残さず、抜け落ちることのない支援
だれひとり取り残さないこと
こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ⽬ない包括的な支援
政府の仕組みや組織、こどもの年齢によって、こどもや家庭への支援がとぎれないようにすること
待ちの⽀援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
こどもや家庭が自分から動かなくても、必要な支援が届くようにすること
データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)
こどものデータを集め、それをしっかり政策にいかすこと
このように噛み砕いてみると、誰にとってもわかりやすい表現になっています。

こども家庭庁の体制や役割とは

こども家庭庁は内閣府の外局として創設

こども家庭庁は、内閣府の外局として創設されます。内閣総理大臣の下に、「こども政策担当大臣」を置き、こども家庭庁のトップはこども家庭庁長官となります。
こども家庭庁には

  • 企画立案・総合調整部門
  • 成育部門
  • 支援部門

という3つの部門がつくられます。
企画立案・総合調整部門全体の取りまとめを行い、成育部門妊娠・出産からこどもの育ちをサポートします。支援部門は、様々な困難を抱えるこどもや家庭に対する包括的な支援を行うとされています。

こども家庭庁についてより

こども家庭庁はこども政策の”司令塔”になる

今まで、こどもをとりまく様々な政策は、担当がバラバラになっていました。
例えば、

  • 青少年の健全な育成及び子どもの貧困対策 【内閣府政策統括官(政策調整)】
  • 少子化対策及び子ども・子育て支援【内閣府子ども・子育て本部】
  • 犯罪から子どもを守る取組【内閣官房】
  • 児童虐待防止対策【厚生労働省】
  • 児童の性的搾取対策【国家公安委員会・警察庁】

などが挙げられます。
また、就学前のこどもの育ちや、放課後のこどもの居場所については主導する省庁がありませんでした。さらに、内閣には「子ども・子育て支援部」があり、厚生労働省にも「子ども家庭局」があるというように、似たような名称の組織も存在していました。
各省庁に点在しているこどもに関わる政策を統括し、機能させていくことがこども家庭庁の役割となります。

こども政策の新たな推進体制に関する基本⽅針のポイント〜こどもまんなか社会を⽬指すこども家庭庁の創設〜より

こども家庭庁の発足は2023年4月

こども家庭庁の創設の背景や、今後の役割などについて解説してきました。実際にこども家庭庁が発足するのは来年の4月です。将来をになっていくこどもたちが心身ともにより健康に育ち生きていける社会になっていくために、こども家庭庁が機能することが期待されます。
参考:
こども政策の新たな推進体制に関する基本⽅針のポイント〜こどもまんなか社会を⽬指すこども家庭庁の創設〜
こども政策の新たな推進体制に関する基本方針について
こども政策の推進に係る作業部会の開催について
こども家庭庁について

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