11月14日に、文部科学省の第8回GIGAスクール構想科での校務の情報化の在り方に関する専門家会議が行われました。この会議では、今年9月に行われた校務の情報化についての調査の結果や、今後の校務DXの位置付け等について意見交換が行われました。今回はこの会議の様子をご紹介します。
目次
「GIGAスクール構想下での公務の情報科の在り方に関する専門家会議」とは
「GIGAスクール構想下での公務の情報科の在り方に関する専門家会議」は、2021年12月に設置された専門家会議です。GIGAスクール構想のもとで、一人一台の端末や、学習系ネットワークが自治体・学校に導入されています。また、教職員の校務の負担軽減のための校務支援システムも多くの学校で導入されています。しかし、学習系のネットワークと校務支援システムを利用するネットワーク(以下、校務系ネットワーク)が分離しているケースが多い状態です。今後は、両者の連携が進み、クラウド上で利活用できるように進んでいくことが予想されており、その方向性や可能性を示すことを目的として、この専門家会議が設置されています。
委員として入っている方々は以下の通りです。
石田 奈緒子
井上 義裕
今井 亜湖
清野 正
小﨑 誠二
執行 純子
妹尾 昌俊
髙橋 邦夫
高橋 純
鶴田 浩一
中村 めぐみ
中村 義和
福原 利信
藤村 裕一
堀田 龍也
水谷 年孝
山口 伸一郎
渡部 理枝
GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第1回)会議資料資料1-1より
校務の情報化に関する調査結果〜統合型校務支援システムを導入している学校は73.4%
今回の専門家会議では、文部科学省が実施した「校務の情報科に関する調査」の結果が公表されました。
全国の都道府県及び市町村の教育委員会、学校組合等を対象に行い、1815件の回答が集まりました。
※都道府県教育委員会:47、市区町村教育委員会:1738、学校組合等:30
「学校における校務の処理を電子化していますか」という設問に対し、「統合型校務支援システムを導入している」という回答が1288で73.4%だった一方で、「校務処理は一切電子化していない」という回答も54で3.1%ありました。
この結果に対し、委員の先生から「超小規模校では校務を電子化する方がコストがかかってしまうのでは」と理解を示す場面もありましたが、在籍する児童のデータがアナログでしか残らないことを懸念していました。
また、「教員は、校務用端末と教務用端末を使い分けていますか」という設問に対して、「端末を使い分けていない」と回答したのは全体の17.9%(325)で、「端末を使い分けている」と回答したのは全体の82.1%(1490)となりました。
「統合型校務支援システムの導入・更改予定時期」を選択する設問では、
令和7年度が17.5%(317)、令和8年度が17.6%(319)、令和9年度が11.9%(216)、令和10年度が20.9%(380)、令和11年度が19.4%(353)、「校務支援システムを導入しておらず、導入予定もない等」が12.7%(230)となりました。
この回答状況を踏まえ、次世代の校務情報化へのロードマップのたたき台が示されました。
GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第8回)資料【資料3】校務の情報化に関する調査結果(令和4年9月時点)より抜粋
このロードマップに対しては、もっと前倒しして計画を進めないといけないのではないかとの指摘がありました。また、導入を検討していない自治体にも働きかけが必要であるという意見もありました。
校務DXの位置付けや校務支援システムが果たすべき役割について〜校務系・学習系システムを横断するダッシュボードを
今回の会議では、校務DXの将来的なイメージ案も示されました。
校務系システムと学習系システムのネットワークが分離していることが多いのが現状ですが、将来的なイメージとしては、校務系システムと学習系システムは、アクセス制御を前提とした上でクラウドを利用することが想定されています。校務系システムと、学習系システムが相互接続できるようになることで、低コスト・リアルタイムでのデータ連携ができるようになります。
また、両者にまたがる「学校・学級ダッシュボード機能」を設け、様々なデータを可視化することを想定しています。このような校務支援システムが、現在も使われているその他の汎用的なクラウドツールとAPI連携できるようにし、一体的な運用ができるようにすることとしています。
GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第8回)資料【資料4】校務DXの位置付けや校務支援システムが果たすべき役割等より抜粋
また、教育委員会の視点では、行政系システムで把握している「学齢簿」や「就学援助」などの情報も必要なものであり、これらも校務系システムと連携できるようにするという方向性も示されました。
これに対しては、子どもたちへのケアに先手を打つことができるようになるのではないかという意見がありました。また、行政系システムで把握しているデータを知りたいという学校管理職がその情報を得るために非常に時間がかかり非効率であるという意見も挙げられました。しかしその一方で、現時点で完成している行政系システムと校務系システムと接続するのが難航している事例や、学校側にとっては「連携すると別の仕事が増えるのではないか」という心理的なハードルがあるという意見も述べられました。
ダッシュボード機能に用いるデータ項目について〜何が必要か今後も検討
上述の校務系システムと学習系システムにまたがり様々なデータを可視化する「ダッシュボード機能」について、どんな項目を設定すると学校や教育委員会にとって利便性が高くなるかについても検討がなされました。
文部科学省からは、すでに実施している渋谷区や、某校務支援システム事業者が制作しているダッシュボード機能におけるデータ項目の例が提示されました。
出欠情報や体力テスト、保健室利用情報といった児童生徒データから、全国学力・学習状況調査等の学習データ、学級数や転出入者数、行事予定等の学校データなどが挙げられていました。
委員の方々からは、各所に散らばっているデータをダッシュボードに集約することで、文部科学省から教育委員会や学校へ依頼する調査の手間を軽減できるようにするなど、メリットがある形にまとめてほしいと意見がありました。
参考:GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議(第8回)資料【資料5】ダッシュボード機能のデータ項目例について
校務DXは道半ば…できることからどんどん実施を
堀田龍也座長は、会議の最後に、「やれることからやっていくしかない」と述べていました。仕組みを大きく変えるときには、走りながら進めなければならないことも多くありますが、やってみたら新たな課題が見つかることもまた多くあります。「校務の情報化」もまさにその段階で、できることから変えていく、課題が見つかればまた検討するということを繰り返すことが結局は近道になるのかもしれません。