全国学力・学習状況調査は、学力テストだけではなく「学習状況調査」とある通り、小中学生の学習についての調査も行っています。一人一台のICT機器が導入されて1年以上経ち、その活用状況が示されました。前回は、児童生徒の回答をまとめていましたが、今回は学校質問紙の回答の方をご紹介します。
目次
全国学力・学習状況調査、学校に対する調査の内容とは
学校に対する質問紙調査では、指導方法に関する取り組みや学校における人的・物的な教育条件の整備状況等に関する調査を実施しています。
内容としては、以下のようになっています。
- 生徒指導等
- 学校運営に関する状況/教職員の資質向上に関する状況
- 主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善に関する取組状況
- ICTを活用した学習状況
- 各教科の指導方法
- 個に応じた指導
- 新型コロナウイルス感染症の影響
今回の記事では、「ICTを活用した学習状況」についての質問項目について抜粋して掲載します。
また、調査に回答した学校は、小学校が、公立18,671校、国立73校、私立123校、中学校が公立9,348校、国立80校、私立334校です。
ICTを活用した学習状況の調査
ICT機器の活用方法を教員が学ぶ機会や、ICT機器活用のサポート体制について
質問項目
教員がコンピュータなどの ICT 機器の使い方を学ぶために必要な研修機会がありますか |
コンピュータなどの ICT 機器の活用に関して、学校に十分な知識をもった専門スタッフ(教員は除く)がいるなど技術的にサポートできる体制がありますか |
教員がICTを活用するために必要な研修が行われているかどうかの質問については、9割程度の学校が「ある」または「どちらかといえばある」と回答しています。校務に活用したり、学習場面で活用したりするためにはまず、教員が機器の使い方を理解する必要があります。そういった機会は学校によって作られているという結果になりました。
また、機器の活用についてのサポート体制としては、「ある」または「どちらかといえばある」と回答した学校が、昨年よりも15%以上増えています。しかし、サポートが「ない」または「どちらかといえばない」という学校も、30%程度残っています。さらなる活用のためには、サポート体制についても検討の余地がありそうです。
学習場面ごとのICT機器の活用頻度について
質問項目
調査対象学年の児童生徒に対して、前年度までに、児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどの ICT 機器を、授業でどの程度活用しましたか |
学習の中のどのような場面で、どの程度活用しているかを質問しています。昨日紹介した児童生徒の回答では、以下のようになっていました。
調べ学習などの場面では、小中学校どちらでも、週1回以上活用していると答えたが70%程度になりました。他方、子どもたち同士で意見を交流する場面での活用は50%程度に留まっているようです。自分の考えをまとめ、発表する場面での活用頻度は小学校では45%程度、中学校では35%程度となりました。
参考:
しかし、学校調査のほうでは、調べる場面での活用を週1回以上行っていた割合は、小学校では90%を超え、中学校でも約88%となっています。また、児童生徒が自分の考えをまとめ、発表する場面での活用状況は、週1回以上活用している学校が小中学校ともに70%を上回る結果となっています。
児童生徒の受け止めと、指導している先生方、学校側の意識には差があるようです。
ICT機器を使ったやりとりについて
質問項目
教職員と調査対象学年の児童生徒がやりとりする場面では、児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどのICT機器をどの程度使用させていますか |
調査対象学年の児童生徒同士がやりとりする場面では、児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどのICT機器をどの程度使用させていますか |
前年度に、児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどのICT機器を使って、児童生徒が学校外の施設(他の学校や社会教育施設、民間企業等)にいる人々とやりとりする取組をどの程度実施しましたか |
教職員と家庭との間で連絡を取り合う場面で、コンピュータなどのICT機器をどの程度活用していますか |
ICT機器を教員や児童生徒がどの程度やりとりに活用しているかをまとめた項目です。
教員対児童生徒では、小中学校ともに70%程度が週1回以上活用しているようです。一方で、児童生徒同士のやりとりは50%程度にとどまります。また、外部の人々とのやりとりを児童生徒が行うケースはかなり少なく、半数以上が実施しなかったという結果になっています。
自治体ごとにGoogleやMicrosoftなどのアカウントを教員、児童生徒に発行していても、メールなどの機能を制限しているところもあるため、外部との連絡にはまだあまり活用されていないようです。また、教員と家庭との連絡にICTを活用している割合は半々程度となっています。
ICT機器の持ち帰り頻度について
質問項目一人一台の端末の持ち帰りなどの状況についてです。3割程度の学校で、端末を毎日持ち帰るようになっています。昨年度に比較して、持ち帰るケースが非常に増えました。「時々持ち帰って時々利用させている」も含めると、6割以上の学校が持ち帰って利用させていることになります。
ICT機器の活用場面について
質問項目
ICT機器の活用場面についての質問です。週1回以上活用している割合が多かったのは、「(3)児童生徒の特性・学習進度等に応じた指導」と「(5)特別な支援を要する児童生徒に対する学習活動等の支援」でした。
ICT機器を活用することにより、子どもたち一人一人の特性に合った指導を行ったり、ペースに合わせた学習をおこなったりすることができていると考えられます。個別最適な学びの実現には、ICT機器の活用が必須です。これらを今後いかに有効活用していくことができるかが肝となりそうです。学校現場でICT機器の活用が進んでいることは事実!児童生徒との受け止めの違いも見えた上記に挙げた項目のほとんどは、昨年度の調査に比べ活用が進んでいるというデータになっていました。先生方へのサポートの機会・体制も増えつつあるようです。しかし、学校が回答した活用頻度と、児童生徒が回答した活用頻度には少し差が見られるなど、先生方と児童生徒の受け止めに差がある部分も結果として見えました。
児童生徒一人一人に配備されたPC・タブレットなどのICT機器について、以下のような用途でどの程度活用していますか (1)家庭におけるオンラインを活用した学習 (2)児童生徒のスタディ・ログを活用した学習状況等の確認 (3)児童生徒の特性・学習進度等に応じた指導 (4)不登校児童生徒に対する学習活動等の支援 (5)特別な支援を要する児童生徒に対する学習活動等の支援 |