給特法はどうなる?給与の手当を見直し?文部科学省の調査研究会が実施
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文部科学省では、給特法の見直しなどを含めた教職の在り方について、2022年12月から情報収集のための調査研究会が行われています。2023年1月16日に、第2回の調査研究会が実施され、2名の委員からの発表が行われた他、各委員の意見交換が行われました。今回は第2回の調査研究会の内容についてご紹介します。

調査研究会の概要

この調査研究会の正式名称は「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」です。
第1回は2022年12月20日に行われています。調査研究会の座長は千葉大学の貞広斎子教授です。第1回の調査研究会では、東北大学大学院の教授で教員の勤務状況の調査に長年関わっている青木教授と、国立教育政策研究所の初等中等教育研究部長の藤原文雄部長から、教員の勤務状況や、海外と日本の教職の比較などについて発表がありました。
資料は文部科学省の会議資料ページにて公開されています。
また、本調査研究会はオンラインで行われており、傍聴フォームに登録すればライブ視聴が可能です。

第2回調査研究会の内容

今回の調査研究会では、
文部科学省の事務局から、教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査についての概要発表、岡山県の鍵本教育長からの発表、埼玉県戸田市の戸ヶ﨑教育長からの発表が行われました。

第2回調査研究会の内容(1)〜教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査について

まず、文部科学省の事務局から、12月に公開された「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査について」の概要が説明されました。

内容については、プランプランでも以前ご紹介しています。

第2回調査研究会の内容(2)〜岡山県・鍵本教育長からの発表

続いて、岡山県の教育長である鍵本教育長から、論点整理の発表が行われました。
給特法が制定された時代と現在では教員の勤務状況は大きくことなることと、教員採用試験の倍率が低下していることを課題として挙げ、現状を踏まえた給与面の検討事項などを提示していました。
給特法が制定されたように、教員の業務の自主性や創造性のによる部分で、勤務時間の内外を分けることが難しいことは現在も変わっていないため、そもそも勤務時間の内外を切り分けることができるのか検討が必要であるとして検討事項を挙げていました。

もし、現在の「教員調整額」(4%)を現状に合わせて引き上げるとすると、教員の過重な業務負担を容認することになる可能性がある点、また、一律に引き上げるとなると、個々の教員の業務量が異なるなかで国民の理解を得られるかの点について検討が必要だとしています。

他方、時間外勤務手当を導入するとしたら、「現在の学校現場の体制で、時間外勤務命令やその管理が可能か」「服務監督権者の時間外勤務の考え方の違いにより給与面の差が生じないか」「効率的に仕事を進め、時間外勤務をしない教員ほど給与が少なくなることへの理解が得られるか」「『超勤4項目』をどう整理するか」について検討が必要であるとしています。

第2回調査研究会の内容(3)〜戸田市・戸ヶ﨑教育長からの発表

戸ヶ﨑教育長からは、人材確保法と給特法を議論の出発点としながら、自身の教員経験等も踏まえて「給特法こそが学校の長時間労働の元凶とする見方、あるいは、給特法を改正さえすれば教師の業務が適正化に向かうという考えには疑問がある」という考え方を提示しました。

その上で、教員の給与体系について、"がんばっている教師"が報われるようになっていないと指摘しており、改善策として「学級担任手当」「特別支援教育コーディネーターへの手当」「道徳教育推進教師への手当」「研修主事への手当」「情報教育主任への手当」「管理職手当(改善)」を提案しました。

青木教授はこれらの提案について「手当の設定は、給与負担者としての県教委の判断で実施することができる」と述べていました。

第2回調査研究会の内容(4)〜二人の発表を受けて

鍵本教育長と戸ヶ﨑教育長の発表を受けて、前回の調査研究会で教員の勤務実態調査などについて発表した青木教授からは、教員定数の考え方を変える必要があるのではないかと発言していました。
現在、公立学校の教員数は児童生徒の数や、学級数に対して配分されていますが、それに対して上乗せするなどの形で授業のコマ数にも注目するべきではないかとしています。座長の貞広教授も青木教授に賛同し、コマ数に着目して教員定数を調整するのが必要ではないかと考えていた。と述べていました。

次回は2月ごろ…今後の展開は

前回の調査研究会では、教職員の働き方の現状が示され、今回の会議では都道府県の教育長、市町村の教育長の視点から給与体系等についての考えが示されました。
今回の調査研究会の資料は、文部科学省の会議資料ページで見ることができます。
次回の調査研究会は2月に開催される予定です。その後、3月ごろには令和4年度の教員勤務実態調査の集計結果の速報が公表される見込みとなっており、具体的な数字を前にさらに議論が深まっていくと考えられます。今後どのように議論がされていくのか注目です。

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