12月6日、文部科学省が「生徒指導提要」の改訂版を公開しました。2010年3月に公開されたものが、今回、12年ぶりに改訂されています。どのような改訂が加えられたのかご紹介します。
改訂版は「デジタルテキスト」で公開された!法令や索引も見やすい
改定後の生徒指導提要は、「デジタルテキスト」として公開されています。目次から各ページがリンクしていたり、記載された内容に関する法令や通知、ガイドライン等に外
部リンクが貼り付けられたりしているので、今まで以上に活用の幅が広がります。
デジタルテキストで作成したことについて、活用ガイドの資料も公開されています。
画像:文部科学省生徒指導提要活用ガイド5ページより
内容の変化〜個別事例の種類が増加
改訂の前後を比較すると、掲載されている個別のケースが増えており、ページ数も多くなっています。改定前、「個別の課題を抱える児童生徒への指導」は約80ページでしたが、改訂後は約170ページと倍以上に増えていることがわかります。
内容としては以下のようになっています。
- 発達に関する課題と対応
- 喫煙、飲酒、薬物乱用
- 少年非行
- 暴力行為
- いじめ
- インターネット・携帯電話にかかわる課題
- 性に関する課題
- 命の教育と自殺の防止
- 児童虐待への対応
- 家出
- 不登校
- 中途退学
- いじめ
- 暴力行為
- 少年非行(喫煙・飲酒・薬物乱用含む)
- 児童虐待
- 自殺
- 中途退学
- 不登校
- インターネット・携帯電話に関わる問題
- 性に関する課題(「性的マイノリティ」に関する課題と対応 含む)
- 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導
精神疾患に関する理解と対応
健康課題に関する理解と対応
経済的困難を抱える場合
児童生徒の家庭での過重な負担についての支援
社会的養護の対象である児童生徒
外国人児童生徒等
改訂後は個別事例の中でも「いじめ」が最初に置かれていることや、「性的マイノリティ」に関する記述が含まれていることが特徴的です。さらに、多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導として、発達障害や精神疾患等だけでなく、家庭での負担が大きいいわゆるヤングケアラーなどにも言及されています。12年前の時点に比べて、現代的な課題も含められていることがわかります。
チーム学校、校則についての記述も
改訂後の生徒指導提要の第3章には、「チーム学校による生徒指導」として、生徒指導は教職員だけではなく、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、その他の専門家や地域の人々と連携・協働することも記述されています。
また、同じ章の中には、学校の校則についての記述もあります。
校則は、「児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるもの」であり、「児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等を踏まえて、最終的には校長により制定されるもの」とした上で、校則の運用については以下のように述べられています。
校則に基づく指導を行うに当たっては、校則を守らせることばかりにこだわることなく、何のために設けたきまりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解しつつ、児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要です。そのため、校則の内容について、普段から学校内外の関係者が参照できるように学校のホームページ等に公開しておくことや、児童生徒がそれぞれのきまりの意義を理解し、主体的に校則を遵守するようになるために、制定した背景等についても示しておくことが適切であると考えられます。
運用だけではなく、「校則の見直し」についても以下のように記述されています。
校則を制定してから一定の期間が経過し、学校や地域の状況、社会の変化等を踏まえて、その意義を適切に説明できないような校則については、改めて学校の教育目的に照らして適切な内容か、現状に合う内容に変更する必要がないか、また、本当に必要なものか、絶えず見直しを行うことが求められます。さらに、校則によって、教育的意義に照らしても不要に行動が制限されるなど、マイナスの影響を受けている児童生徒がいないか、いる場合にはどのような点に配慮が必要であるか、検証・見直しを図ることも重要です。
服装、髪型等に関する過度な規定や、理由の明確でない校則等が近年取り沙汰されていますが、これらはそういったケースを考慮していると考えられます。改正前の生徒指導提要では、校則については規範意識の育むという観点で盛り込まれていたため、改訂の大きなポイントといえるでしょう。
改訂後の生徒指導提要はより具体的に
改訂後の生徒指導提要は、より具体的な内容な記載が増えています。学校に求められることが新たに増えたのではなく、法令や通知などとあわせて体系化され、ひとつにまとめられたものだといえるでしょう。基本に立ち返ったり、生徒指導の年間計画を立てたりするときには参考になりそうです。目次や索引などから、興味のある部分だけでも目を通してみてはいかがでしょうか。