キャリア・パスポートがもたらす教育的効果とは?国立教育政策研究所レポートから#2
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キャリア・パスポートは、2020年4月から全国の小中学校や高校で導入され、実践が進んでいます。全国での本格導入が始まる以前の2019年7月~10月に、キャリア教育に関する調査が実施されています。この調査は、国立教育政策研究所が実施したキャリア教育に関する研究のためのものです。全国に先立ってキャリア・パスポートを運用したり、キャリア教育に力を入れて実施したりしている学校では、どのような教育的効果が挙げられていたのでしょうか。前回の記事では、小学校におけるキャリア・パスポートによるカリキュラムマネジメントの効果についてまとめましたが、今回は「職業に関する体験活動の重要性」について見ていきます。

キャリア教育のカリキュラム・マネジメントでプラスの影響が!

キャリア教育の計画を立て、実施していくことで、学校全体のキャリア教育のPDCAを回すことができます。これにより、学校のキャリア教育の質は高まっていくと考えられます。また、キャリア教育の計画を立て、実施している先生の学級では、子どもたちが学習に主体的に取り組む姿勢が見られ、人間関係形成・社会形成の能力の高まりも見えるという内容が報告されていました。(参考
では、キャリア教育の内容についてはどのようになっているのでしょうか。

キャリア教育における職業に関する体験活動の重要性

キャリア教育の内容として、職業に関する体験活動を実施する学校があります。生活科では教科書の中に「お店体験」などの体験活動が位置付けられているケースもあります。そういった体験活動を実施することは、子どもたちの学習意欲の向上に影響していると考えられています。

キャリア教育における体験活動の目標設定

職業に関する体験活動をキャリア教育の計画を作成している学校のなかで、体験活動を重視している学校は、体験活動の目標設定に特徴があるようです。体験活動を重視している学校の方が、そうでない学校よりも、「多様な働き方があることを知る」や「将来の職業選択を考える」という目標を設定している学校が多いということが明らかになっています。

参考:キャリア教育に関する総合的研究 第二次報告書Ⅱ1(2)

また、そのような目標を設定している学校の子どもたちは、そうでない学校の子どもたちに比べて、「家での学習に積極的に取り組んでいる」という質問に「あてはまる」と回答する割合が多くなっています。「多様な働き方があることを知る」という目標を設定している学校で比較すると13.5ポイント、「将来の職業選択を考える」という目標を設定している学校で比較すると13.4ポイントの差が見られました。
このように、職業選択や働き方、生き方について考えるという目標を重視して体験活動を実施することは、子どもたちの学習意欲向上につながる可能性があります。

キャリア教育における体験活動の事後指導が与える影響

体験活動を実施する前の「事後指導」において、「『キャリア・パスポート』等を活用して当該体験活動の経験を卒業後の進路につなげる指導」や「発表会やポスターセッションなど当該体験活動の成果を共有させる指導」を行っている学校は、そうでない学校と比較して、「授業や学校行事以外で学校の活動に積極的に取り組んでいる」と答えた児童が多かったということです。特にキャリア・パスポートを活用している学校においては、26.6ポイントの差がありました。キャリア・パスポートを活用して学習経験をまとめる取り組みは効果が高く、児童の学習意欲の向上につながると言えるでしょう。

参考:キャリア教育に関する総合的研究 第二次報告書Ⅱ1(2)

キャリア教育における体験活動が子どもたちにもたらす効果

「お店や工場,農家や漁師の仕事などの職業を見学したり体験したりする活動」を学校で行っている学校では、そうでない学校と比較して、子どもたちの学習への意識や、基礎的・汎用的能力が高いという分析結果が出ています。
「学校での勉強は将来の仕事の可能性を広げてくれると思う」「学校での勉強はふだんの生活を送るうえで役に立つと思う」「これからもっとたくさんのことを学びたいと思う」という学習意欲についての項目や、「誰かの話を聞くときは、その人の考えを受け止めようとしている」「自分の長所や短所などについてわかっている」「何か問題が起きたとき、原因を考えて、解決するように工夫している」などの基礎的・汎用的能力についての項目で、有意な差が見られており、体験活動の実施が子どもたちへプラスの影響を与えていることが明らかになりました。


参考:キャリア教育に関する総合的研究 第二次報告書Ⅱ1(2)

キャリア教育における体験活動が子どもたちの学習意欲に影響

キャリア教育における体験活動では、①職業選択や働き方、生き方について考えるという点について重視して目標を設定すること、②事後指導でキャリア・パスポートを活用したり、ポスターセッションをおこなったりして体験活動をまとめることが重要です。そのように実施していくと、子どもたちの学習意欲や、基礎的・汎用的能力が向上することにつながると予想されます。ただ実施すればよいわけではないということがわかりますが、先生方の時間も限られています。他の学習指導とのバランスを見たり、カリキュラム・マネジメントを行い合科的な指導を行ったりすることで、有意義な指導を行いましょう。

参考:
国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター
キャリア教育に関する総合的研究第二次報告書
PDF資料はこちら

 

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