毎年、全国で行われる「全国学力・学習状況調査」の結果が公表されました。都道府県別の平均正答率なども公表されるので、ランキング形式で注目されることもありますよね。実際小学生・中学生がどのような問題解いているかご存じですか?問題は、国立教育政策研究所のサイトで公開されています。今回は、大人でも混乱する(?)小学校の算数の問題を紹介します。
目次
そもそも「全国学力・学習状況調査」とは?対象者は小学校6年生&中学校3年生
全国学力・学習状況調査とは、2007年から全国で実施されている調査で、学力や、学習状況を把握するために行われています。対象は、小学校6年生と、中学校3年生です。教科は国語と算数・数学で、理科と英語が3年に一度程度実施されます。2022年度は、国語と算数・数学に加えて理科も実施されました。
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、実施されなかったため、問題と解説資料のみが公開されています。
参考:文部科学省:全国的な学力調査
全国学力・学習状況調査に出題される問題はどんな問題?
この調査では、小学校6年生のテストでは小学校5年生までの学習内容が、中学校3年生のテストでは中学校2年生までの学習内容が出題されます。
記号で選択する問題や、短答式の問題、記述式の問題がそれぞれ出題されます。
記述式の問題では、問題文の中の文章を参考にして答える問題が出される傾向にあります。ゼロから自分で考えなくても、問題をしっかり読んで考えれば、言葉を少し変えるだけでも正しく答えられるように出題されています。
今年の各種問題でも、記述式の問題が出されました。中学校理科の問題を見ると、正答率がかなり低い記述式の問題もありましたが、小学校算数の問題では、記述式よりも選択式の問題で正答率が低い問題もありました。
どのような問題が出されていたのか見てみましょう。
小学校算数の問題!あなたは解けますか?
小学校5年生までの算数の学習内容で、難しい単元とされているのは「割合」の単元です。小学校5年生で新しく習う割合という概念を理解することがなかなか難しく、つまずいてしまう児童も少なくありません。「もとにする量」とか「1を基準に」という抽象的な概念を身につけ、使いこなせるようになるには繰り返し練習することが必要です。
では、実際に割合の単元で出題された問題を紹介します。大問2の(1)〜(3)の問題です。
元はこちらで解説されています。
(1)割合を分数で表す
(1) オレンジの果汁が25%ふくまれている飲み物があります。
飲み物の量をもとにしたときの,果汁の量の割合を分数で表しましょう。
飲み物全体を100%として、そのうち25%が果汁です。
分数で表すため、もとになる全体を100とすると、25%は25です。分数にすると25/100、それを約分して「1/4」と表すことができます。
正答:1/4 *25/100など、値の大きさが正しければ正答になります。
正答率:71.3%
(2)割合ともとになる量から計算する
(2) オレンジの果汁が40%ふくまれている飲み物があります。
この飲み物1000mLには,果汁が何mL入っていますか。
答えを書きましょう。
もとになる1000mLのうち、40%が果汁です。
40%は小数で表すと0.4になります。このパーセンテージから小数への変換も「割合」の学習で慣れていないと難しいポイントです!
1000mLに0.4をかけて、400mLと求められます。
正答:400mL
正答率:64.8%
(3)果汁入りの飲み物を「分けた」ときの割合
(3) りんごの果汁が20%ふくまれている飲み物が500mL あります。
この飲み物を2人で等しく分けると,1人分は250mLになります。
250mLの飲み物にふくまれている果汁の割合について,次のようにまとめます。
250mLは,500mLの1/2の量です。
このとき[ (ア) ]上の(ア)にあてはまる文を,下の 1 から 3 までの中から1つ選んで,その番号を書きましょう。
1 飲み物の量が 1/2 になると,果汁の割合も 1/2 になります。
2 飲み物の量が 1/2 になると,果汁の割合は2倍になります。
3 飲み物の量が 1/2 になっても,果汁の割合は変わりません。
こちらは選択式の問題です。
題意をスムーズに取ることができたでしょうか。
「500mLのりんごジュース(果汁20%)を二等分すると、果汁の割合はどうなるか」
を選ぶ問題です。
果汁20%のジュースは、500mLでも、250mLずつになっても、果汁20%であることは変わりません。
したがって、
3 飲み物の量が 1/2 になっても,果汁の割合は変わりません。
を選択するのが正解です。
正答:3
正答率:21.6%
この問題の正答率は21.6%と、他の問題と比べてかなり低くなっています。
誤った選択肢である「1 飲み物の量が 1/2 になると,果汁の割合も 1/2 になります。」を選んだ児童が67.7%を占めており、割合について誤って捉えている状態である子どもが多いことがこの問題からわかります。
また、算数の問題でありながら文章が多く、正しく読んでいかなければ、正解を選ぶことはできません。算数でありながら読解力も求められています。
ランキングだけではなく、ぜひ中身の問題も読んでみて!
平均正答率のランキングで、どの都道府県のランクが高いかなど、そういった点が注目される全国学力・学習状況調査ですが、可能ならぜひ、問題を見てみてください。学習する単元の中身が大きく変わっているわけではありませんが、問われ方や、知識の活用の仕方が変わっているのが現状です。これからの社会を生きていく子どもたちがどのような力を身につけてほしいと学校が考えているのか、問題から読み取れることもありそうです。