教員の働き方の実態とは?〜令和4年度教員勤務実態調査の結果速報より

令和4年度の教員勤務実態調査の結果が速報版として公開されました。この調査は、教員の労働状況や働き方改革の進捗を把握するために行われたものです。今現在、文部科学省などでも教員の働き方について議論が深められているタイミングであり、内容が注目されていました。今回は、公開された内容についてご紹介いたします。

教員の勤務時間(在校等時間)の変化

令和4年度教員勤務実態調査によると、教員の勤務時間(在校等時間)は、平成28年度の調査と比較して全体で約30分短くなっています。
在校等時間とは、休日なども含めて学校に滞在している時間や、児童生徒の引率や研修等で校外にいる時間、自治体が定めるテレワークの時間を合計し、そこから勤務時間外における自己研鑽等の業務外の時間と、休憩時間を除いたものを指しています。
平成28(2016)年から令和4(2022)年の変化であることを考えると、働き方改革の大きな成果は未だ出ておらず、引き続き長時間労働の実態は変わっていないとも言えます。従来から続いている業務は大きく変わらないにも関わらず、むしろコロナ禍での感染症対策やGIGAスクール構想への対応など、新たに対応するべき事項が増えた面もあるでしょう。一人一台の端末が行き渡ったおかげでICT活用が進み、効率化された部分もあり、結果として「30分短縮」という結果になったのではないかと考えられます。

教員の勤務時間(在校等時間)の実態

一方で、教員の勤務時間(在校等時間)の現状に目を向けると、依然として過労問題が深刻であることが明らかになります。

1日あたりの在校等時間は10時間前後

調査結果によると、多くの教員の平日1日あたりの在校等時間が10時間近くまたはそれ以上であり、、働き方改革が進んでいるとは言え、まだまだ過重な労働環境であるのが現状です。
今回の結果の中では、職種別、年齢別に分けた数値が公表されています。
1日当たりの在校等時間(平日)の数値は以下の通りです。
職種別・1日当たりの在校等時間(平日)

小学校 中学校
校長 10:23 10:10
副校長・教頭 11:45 11:42
教諭 10:45 11:01
講師 10:18 10:27
養護教諭 9:53 9:53

 

年代別・1日当たりの在校等時間(平日)

小学校 中学校
30歳以下 11:03 11:29
31〜40歳 10:43 11:04
41〜50歳 10:41 10:55
51〜60歳 10:39 10:44

 

さらに、持ち帰り残業も発生しています。本調査の結果を見ると、平日でも土日でも20分〜40分程度の持ち帰り残業があるとされており、在校等時間と持ち帰り残業を合計すると、11時間を超えるケースが多くあるようです。中学校では、1時間近くの持ち帰り残業も見られます。

画像:教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について17ページ

 

1週間あたりの総在校等時間は50〜60時間が最も多く

1週間あたりの「教諭」の総在校等時間について、「令和4年度は、小学校は50~55時間未満、中学校は50~55時間未満、55~60時間未満の者が占める割合が高い」とされています。

 


画像:教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について15ページ

 

この資料を見ると、1週間あたりの総在校等時間が50〜55時間程度になる人が小学校では約30%、中学校では約20%となっています。
55時間を超える人の割合を合計すると、小学校では、34.2%で、中学校では56.9%になります。
現在、自治体が条例等で定めれば、教員にも1年単位の変形労働時間制を導入することができるようになっています。この制度が導入された場合、繁忙期とそうでない時期によって労働時間が変化します。繁忙期だとしても、労働時間の上限は決まっており、1週間の上限は52時間です。
この調査結果と照らし合わせると、小学校では3分の1以上、中学校では半数以上が、1週間の上限を超える働き方をしているということがわかります。
時間外労働の部分だけを算出しようとすると、1日8時間×5日間の所定内労働時間は週40時間なので、1週間の時間外労働時間は10〜15時間程度です。1ヶ月の時間外労働時間に換算すると、40〜60時間程度になっていると考えられます。

調査が行われた時期について

この調査は8月、10月、11月に行われています。
8月は長期休業期間と重なります。夏休みも教員の業務はありますし、部活動なども行われます。
毎日児童生徒が登校して授業を行うわけではないので、学期中よりも勤務時間が短くなりますし、年次有給休暇も取得しやすい状況になります。
他方、10月と11月は通常通り子どもたちが登校してくる学期中です。しかし、この時期は通知表作成等の時期とはずれており、教員が非常に多忙になる時期とは重なっていません。
10月には運動会、11月には学習発表会や文化祭などの行事がある学校もありますが、年間を通じて最も忙しい時期とは言えません。
それでも、週50〜60時間程度勤務している(月の時間外労働に換算すると、40〜60時間になる)教員が多いのが現状です。

自民党の特命委員会では提言も〜教員の働き方は改善されるのか?

5月10日に自民党の特別委員会でまとめられた提言のなかでは、すべての教員の1ヶ月あたりの時間外労働時間を45時間以内に抑え、将来的には20時間程度にすることを目指すとされています。
理想と現実の乖離はまだ大きいままです。一人ひとりの工夫やツールの活用だけではなかなか実現できない目標にも思えます。人員を増やしたり、業務の一部を外部に委託したりする必要もあるでしょう。どのような改革がなされるのか、今後も注視していく必要がありそうです。
参考資料:教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について

 

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